メンタルブログ

ナンパエピソードや、戦略、記録等を綴るブログです。

モテの正体

 
 
 
彼女と出会ったのは大学に入学してすぐの頃。

友達がノリで開いた新入生同士の小規模な飲み会だった。

意気投合して、この時の顔ぶれがグループ化し、皆で日常的に集まったりするようになった。

俺は最初、彼女のことを特に意識しておらず、気兼ねなく話せる友達の1人くらいに思ってた。



契機になったのは、GW前。

色々あって、心身共にめちゃくちゃ追い込まれてた。

彼女は優しかったから、SNSや学内でしんどそうにしてる俺を見てよく気遣ってくれた。

彼女には好きな人がいるらしいという話は聞いていたから、変に勘違いすることはなかったんだけど、

友達としてずっと支えてくれる彼女に、いつしか恋心を抱くようになっていた。



そして俺は、この後この子に4回フラれることとなる。



1回目。

講義の合間、暇になって自宅で一緒にいるときに、思い付きで隣県の観光地への日帰り旅行を提案した。

むこうも乗り気だったこと、2人で過ごすときの雰囲気、そもそもよく自宅に来ていることから、手応えを感じていた。

結局、なんやかんやで行き先は近場のショッピングモールになってしまったんだけど、それでも嬉しくて仕方なかった。

映画を見て、感動した彼女が泣いてしまったのを覚えている。

泣くほどの感動を共有できて、心の距離がさらに縮まった気がした。

住んでいた街に帰って、予約してたちょっと良い店で夕食。

話は弾みっぱなしだった。お互いのボルテージが高まっているのを感じる。

そのまま家へ。

経験の浅かった自分は、この時点で勝ち確だと思ってた。

一方、死ぬほど緊張もしていて、何度もトイレに立って告白のセリフを反芻し、やっとの思いで気持ちをぶつけた。

好きだから付き合ってほしいと。

笑顔の彼女。

「いや、それは無理だわw」

余りにもあっけらかんと答えるから一瞬呆然となる。彼女はへらへらとしていた。

いやいや、ネタやなくて!w

と自分が続けて、何故好きになったのか、どんな気持ちなのか、真剣な表情で語り始めると、彼女は押し黙った。

とても困った顔をしている。

やがて彼女は、気まずそうに口を開いて謝ってきた。

どうしても、男としては見れないわ。と。

その場で泣きたい気持ちを押さえて、おっけおっけ!と明るく振る舞い、彼女をマンションから見送った後さめざめと泣いた。

人生で一番の失恋だった。





その後、グループで会うときの彼女は気さくに接してくれて、友達としての関係は続いていた。

そんな中で、ひょんなことから彼女が同じグループ内にいる自分の友達が好きなことに気づいてしまう。

悟られてはいけない。

友達はとても良い奴なので、俺が彼女を好きなことがバレれば、友達は俺に遠慮して彼女を相手にすることは無いだろうと考えたからだ。

ベタなヒロイズムに酔っていたところはあると思うけれども、

もし友達が彼女を好きになれたら、二人で幸せになってほしい。

損得抜きでそう思うくらい彼女が好きだった。




2回目。

彼女に恋人ができた。

それは結局、俺の友達ではなくグループ外の人だったんだけれども、なんやかんやで彼女は幸せそうだった。

友達とは進展がなかったのかなと思い、彼にそれとなく話を聞いてみた。

彼女から何度か飯に誘われて同行したけど、特に何もなかったとのこと。

それってお前のこと好きやったんちゃう?と尋ねると、「あの子とどうこうなるつもりはないからなぁ」と答えていた。

つまり、彼女は友達にアタックを仕掛けてみたものの、結果が振るわなかったため、言い寄られていた今の彼氏と付き合った、という運びの様だった。




そこからしばらくして、彼女が破局したことを知る。

いても立ってもいられなくなって、露骨過ぎるかなとは思いつつ、速攻で彼女と連絡をとり、自宅まで行った。

ひとしきり喋った後、帰り際に2度目の告白。

今度は冗談だと思われないように、最初から真剣味丸出しで思いの丈をぶつけた。



「分かった、ちょっと考えさせて。」

という返事。

オーケーされた訳でもないのに、嬉しすぎて叫んでしまったのを覚えている。

声出すな(笑)

と、笑顔でつっこんだ彼女と別れた後、嬉々としてチャリを爆走させながら帰った。

うわああ、と歓喜の声が漏れる。

事の次第を知る地元の友達にすぐ報告して、

「女の保留はNOやぞ~(笑)」と、からかわれたりしつつも、有頂天の日々を過ごした。

しかし、そこから彼女との連絡がつかなくなってしまった。

翌日も翌々日も、

ラインが既読になることはなく、忙しかった自分は、その週グループで顔を合わせることもなく、1週間ほど彼女との接触は無かった。

しばらくして、学内でちょうど健康診断があった日。

彼女から1通のラインが届く。

恐る恐るメッセージを開封すると、

『長いこと待たせてごめん。考えたけど、やっぱりメンタルとは付き合えない』

とのことだった。

凹みすぎて問診の時に医者から心配され、事の経緯を説明してカウンセリングルームに連れていかれた話は今でも語り草だ(笑)。






それから彼女は、ずっと恋人を作っていない。

やはり、友達のことが好きなようだった。

ある時、友達に振り向いてもらえなくて病んだ彼女の様子を見て、深夜に遊びへ連れ出したことがある。

心底悲しそうだった。自信を失っていた。

その姿があまりにも辛そうで、俺は彼女の心を少しでも救いたい一心から

「俺は○ちゃんが好きやねんけどなあ」

と言い、肩を抱こうとした。

触れる直前、悲しげな彼女がぼそりと呟く。

「(メンタルじゃ)ダメだって」、と言われた。



キツすぎるwww

とか言いながら、どうしようもない気持ちになった。





まあ、暇やからもうちょいおるわ。



抱きしめようとした手は虚空をかいて、彼女の肩をぽんと叩いた。

翌日、早朝から部活があったけど、必死になって笑いをとったりしながら、夜明けまで彼女に寄り添った。  

つれない態度をとられていたけど、それでも彼女が好きだった。




それが3回目の告白。

それからも、お百度まいりのごとく俺は繰り返し繰り返しアプローチを重ねた。

彼女の好きなアーティストのCDを聞いたり、何度も遊びに誘ったり。

皆で遊んでるとき、彼女が好きな友達と彼女が良い感じになっているときは、そっとフェードアウトした。




年数を重ねるごとに彼女の魅力に気づいていく。

ぶっきらぼうだけど、責任感が強くて人を気遣えるところ。

聡明で、おもしろい物の見方をするところ。

わけわからん変なものが好きなところ。

端から見たら、なんでそれが良いんだと思う部分もあったろうし、

目の前で、彼女が自分の友達にときめいているシーンを見て、さらにそれを後押しするのは辛かったけど、

嫌なところも良いところも愛しく思えて、無償の愛情を注げることが恋だとするならば、自分はそれに落ちていた。





そして、最後となる4回目の告白は、自分の卒業間近の時。

向こうは地元に帰ってて、俺は就活真っ只中。

選考のついでに彼女の地元近くで飯を食った。

お金無いでしょと彼女がご馳走してくれた洋食屋、本当に美味かった。

悩みを聞いて励ましてもらう構図が入学初期の頃を彷彿とさせる。

ただ別れ際、就活頑張れ!と、背中を叩いてくれた彼女の様は、悲しいかな完全に友達のノリだった。



報われることはなかったけど、ここまで人を好きになって、まっすぐぶつかり続けられたことは良かったなと思う。

その後、彼女は東日本、自分は西日本に就職。

卒業後1,2年目くらいはたまに遊んだりもして、良い友達関係は続いたけれども、あえて連絡をとらなくなった。

袖にされ続けた過去をバネにして、一念発起しナンパ界隈に足を踏み入れることになるからだ。

自分の人生を変えてやるという並々ならぬ覚悟で、ショボ腕の鈍足ながらもこつこつと努力を積み重ねていた。

そんな中、彼女の職場近くに出張が入り、アポを組むことになる。

前置きが長くなったけど、今回はその時の話。



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泊まっているホテルのエレベーターが1階につき、彼女の待つフロアへ降りる瞬間、急に動悸が止まらなくなった

立ち止まって、精神を整える。

23歳の時、競技人生で一番の大舞台に立った時の事を思い出していた。

未踏の舞台で委縮している自分に

『もうこっからは、勝とうとせんでええよ。』

と、電話で地元のコーチが言葉をかけてくれた。

これは、「いつも通りの動きを再現することだけに徹する」のが、勝つための最善手であって、勝ちたいと思う気持ちは雑念となってパフォーマンスを下げる、だから勝ちたいと考えなくていい、という旨のアドバイスだ。

十分な練習は既に済ませてきていると。

あとはそれをなぞるだけ。

今日だってそうだ。

死に物狂いの努力を積み重ねてきた。

2445声かけ、197連れ出し、48アポ

ナんパ開始から一年半ちょっと、ストリートで経験してきた案件との対戦数だ。

文字通りの百戦錬磨。

つい数時間前も、既に1即を終えている。

舌の体操と深呼吸、ネタ帳の見直しを行い、歩き出す。

平生の努力、成功体験の回顧とルーティンは気持ちを落ち着かせ、自分の目には自信が満ち溢れていた。




彼女はロビーのソファーに座っていた。こちらに気づいて、歩み寄ってくる。

とても大人っぽくなっていた、ように感じる。

硬くなっている自分とは対照的に、向こうはとても気さくで、自分と相手の温度差を再確認させられた。

昔と同じように1つ2つ軽口をたたくと緊張はほぐれて、和やかなムードで店へと向かった。




横並びの席で会話する。

いざ口説きが始まると、不思議と落ち着いている自分に気づいた。

いつも通りだ。

近況や仕事、人間関係の話。最近あったおもろいエピソード。

彼女の物の見方はおもしろい。

エピソードトークを話すと、いつも自分の考えが及ばないところから意見を飛ばしてくる。

言葉を投げかけ、反応を拾って、広げたり、切ったり、自然な流れで次の話題へ。

いじるし、ボケもする。

その中で好意をほのめかすけれども、前のめりにはならない。

師匠 伊右衛門がいつも口にしていたアドバイス

要所要所で鉄板のネタ話も披露した。

ナンパ始めてから作ったもので、200人近くに試してほぼ毎回笑いがとれたやつ。安心感が違う。

その一連のやりとりで楽しそうにしてくれる彼女を見て、自分も心から楽しかった。

話が尽きない。

会えなかった時間を埋めるように会話を重ね、

流れるように夜は深まっていった。



 
当初の予定90分、を少し超えて2時間が経過したとき、唐突にその時はきた。

「ちょっと酔ったかも」

酒豪の彼女から初めて聞く言葉だった。

酒はそんなに入っていない。

甘えるような視線が、頃合いを告げていた。

そろそろ出よかー、と言って店外へ。

酔うたやろ。捕まっとき、と言って彼女の肩を抱く。拒絶は無かった。

初めて感じる彼女のぬくもり。

無言でホテルの前まで歩く。

立ち止まって、恒例の神戸プリンルーティンを発動する時。



声が出なかった。



定量的な食いつきのサインが見えて、自分の部屋から見える夜景が綺麗だという布石も打っている。

でも怖かった。

ここまでの間、彼女と築き上げてきたものが壊れるかもしれない。 

気まずくなったらもうグループで集まることはできなくなるかもしれない。

という恐怖が、自分をすくみ上らせていた。

リアルコミュニティならではの難儀さを感じる。



「もうちょい一緒におりたいわ」



自然とそう発していた。

最後に彼女へ繰り出したのはルーティンではなく、素の気持ちだったと思う。

いいよ、と彼女は答える。感情が読めない声だった。

エレベータに乗り、フロアへ上がって、部屋へ。

予めカーテンを開けておいた窓から細い光が差し込み、部屋をムーディに照らしていた。

彼女をベッドに誘導し、自分も横に座る。

肩を支えながら、また話し始めた。

ちょっと深い話をする。

彼女は胸襟を開いて話してくれた。

ここ数年、家族や友達と離れ離れになって寂しいこと。将来への不安。学生時代の楽しかった思い出。

会ったときから気になっていた彼女の物憂げな雰囲気、それはひとえに環境の変化で起こった寂しさからくるもののようだった。

彼女は家族ととても仲が良かったから、その辛さは想像に難くない。


「寂しいよな、社会人生活。周りの人はいなくなるし、新しい環境の人間関係は薄いしさ。」

「うん」

「学生時代、つるんでて楽しかったわ。ほんまに好きやったんやで。」

「嬉しいとは思ってたよ。友達にしか見えんかったからしゃあないじゃん。」

そう言う彼女の目を見つめる。

ぱっちりとして、色の深い瞳が揺れていた。

その視線が、体の距離が、呼吸のかすかな乱れが、自分にサインを告げていた。

「今は?」

問いかけると、口をつむぐ。

彼女の肩を抱き寄せ、唇が重なった。

そのまま、折り重なって熱を合わせる。

グダは無かった。

何度も渇望した彼女の温もりが自分を包んで、なんだか無性に泣きたくなってしまった。

自分を受け入れてもらえるという事がこんなに嬉しかったことはない。

ただ、どうしてもなし崩し的に事が終わってしまうのが嫌で、自分は一度彼女から体を離して向かい合う。

熱っぽい顔の彼女の目を見て、まっすぐに、5度目の告白をした。
 
「付き合おや」

へりくだらない。驕りもしない。堂々とした態度で意思を示す。

彼女は
 


「うん」

と言った。




その時の表情は、今まで自分が告白をして振られた時の困った顔ではなかった。

それは、自分を形成する全てのものが劇的に変わったからだと思う。

顔面にメスを入れて獲得したスト値が
練り上げてきたトーク
こすり倒したルーティンが
洗練されたノンバーバルが
艱難辛苦で鍛え上げられたメンタルが

何度ぶちあたっても拒絶してきた彼女から「うん」を引き出した。

それは、ナンパ活動を通じて得られたものに他ならない。

この界隈には、「非モテ」という言葉がある。

異性に好かれない人やセックスできない人を指す。

では「モテ」とは何なのか。

不特定多数の異性から言い寄られる人、セックスに不自由しない人か。

一般的な解釈としてはそうなのかもしれないが、何となく釈然としなかった。

それが今日、明確になった気がする。

「変わったね」と言う彼女を見て

このためや、と思う。

自分の理想とする人を魅了し、心から幸せになる力。

それが自分の考えるモテであり、そのための努力を自分は積み重ねてきたんだと。

文字通り、海千山千超えてきた。



11ヵ月間 即れなかったホーム関西のストリート

東北の凍える夜

灼熱の南海

チームプレイで性覇した九州

完ソロで踏破した台風の四国 

くたばるまで頑張った東日本ストナンノック



自分の無力さに何度うちひしがれただろう。

挫折するたびに、たくさんの人に支えられ、立ち上がり、自分の脆弱なメンタルは強くなっていった。

その努力をもって、彼女は自分の彼女になった。

どうしても男として見れないという、何年にも渡る彼女の評価を覆したんだ。

ありがとうナンパ。

死に物狂いの修行の末、手にした彼女を強く抱きしめる。



これから、どうなるかは分からない。

向こうにもっと良い人が現れて、彼女を奪われるかもしれないし、仕事で国をまたいで離れ離れになるかもしれない。

急に気持ちが冷めたり、どちらかが急逝する可能性だってあるだろう。





でも、もしこのまま、この子と幸せになれたら

初めてフラれた日のように、泣いてしまうんだろうなあ

(終)