遠征ストナンノック2日目 味噌 陰と陽
【2日目 味噌 陰と陽】
A子は一人ではなく、集団と一緒にいた。
A子を合わせて女4男4。
二人で店に移動しようとするやいなや、A子が集団の中から女の子を一人呼びつけ、「この子も行くから」と言い出した。
ごっつ癖の強い子だった。
がっしりとした体躯にパンクな服装、人当たりのよさそうな顔には所狭しとピアスが付けられている。
昨日A子と行ったバーの店員らしい。ピアス子とする。
今日のアポが成立した経緯を説明すると、A子にダメもとで朝送ったラインに返信があり、つい数時間前に弾丸で会う流れになったのだ。
あんな毒吐きながら立ち去って行ったのに何なんだとも思ったが、なんせA子がタイプだったこと、ホテルで挿入前までいけたこと、タイマンならばという思いからリベンジに至った。
しかし、ピアス子が来て逆3となった時点でまた昨日の焼き直しだ。
どうするか悩みつつ、A子の希望で最寄りの焼き肉屋にインした。
女子二人がハイテンションでよく喋る。
絶対食われへんって!と制止する俺を遮ってA子がバカみたいな量のレバーを注文しだした。酒もジャンジャン来る。
昨日は飲まなかったことをさんざディスられたため、ペースに気を遣いながらも必死で酒を消化した。
ほぼ寝てない10時間勤務後の体で、ハイテンションギャルに対応しながら肉を食い、苦手な酒を流し込む。
しんどい。ほんまにしんどい。
これがまだノック二日目という事実に愕然とした。
一軒目で出来上がっている彼女らのテンションはバカ高く、ノリと勢いとハラスメントだけが場を支配していた。
それでも何とか食らいつき、次に繋がる布石を打とうとしていた。
小一時間ほど経った頃、女性陣の箸が止まった。
二人とも苦しそうな顔をしている。
A子「あー腹いっぱいもう食えん」
俺「やから言うたやん(笑)多すぎやて」
A子「うるさいな、処理するから大丈夫だって」
おもむろに携帯を取り出して電話をかけるA子。
ピアス「メンちゃん男やで食べてやあ」
メ「酒で気持ち悪いねん」
A子「こいつシャバいから無理だよ」
メ「あ?」
とか小競り合いを続けていると、テーブルにチャラそうな男がやってきた。
男「ふい(笑)」
男はおもむろに着席しだすと、黙々と残されたレバーを食い始めた。
俺「いや、ふい(笑)やなくてほんま誰(笑)」
A子「友達!肉食べに来てもらった」
男の登場で盛り上がりはピークに達し、酒がガンガン進む。
ウォウウォ!ウォウウォ!と壊れたラジオの様に繰り返すA子とオーディエンス。
このトチ狂ったノリと内輪ネタのオンパレードに置いてけぼりを食らっていた。
加えて、猛然とこみ上げる吐き気。
これは無理だ。
ここで、諦めてしまった。
自分は人形の様に喋らなくなり、解散になるのを待って、店を出た。
A子と知り合いの店員が店先まで出てきて、今度は二人で取っ組み合って騒いでいる。
その横では、吐き気を催して路上に粗相しながらも次の店の予約を取る男がいた。
その様子を、完全に一線ひいた所から見ている自分に気づく。
自分の性根は陰キャだ。
体調も翌日の事も気にせず“今”を楽しんでブチ上がりまくる陽キャ集団と、属性の違いを見せつけられていた。
そこからの記憶はあまり定かではない。
「こうなるんは分かっとったけどな」とかワケわからん強がりをかましてA子らと解散し、街に出た。
時刻は0時過ぎ。
眠い。足が痛い。
ふらふらと彷徨いながら、向こうから歩いてくる案件に近寄るが、目が合った途端逃げられてしまう。
全身から必死さと疲れがにじみ出てしまっていることを感じた。
前からはダメだ。
次はやり過ごして後ろから追いかけようとするが向こうの速度に追いつけない。
這う這うのていで必死に数声かけするも、オープンすらしなかった。
めまいがする。
眠い。アルコールで気持ち悪い。
このままではいくら続けても無駄だ。
一旦仕切りなおそう。
そう思って縁石に腰かけた。
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気が付くと寝ていた。
時計を確認すると午前4時。
何時間くらい眠っていたのだろうか。
限界だったんだなと思いつつ、ホテルへ向かいベッドに倒れた。
明日から関東入りする。
ローカルが続くため、味噌よりも厳しい戦いになるだろう。
失意と不安に苛まれながら、泥のような眠りに意識を落とした。
<2日目総括>
アポ 1
声掛け 5
Lゲ 0
連出し 0
即 0
(続く)